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「ダガリン」への抵抗〜カウンター・カルチャーを拒絶する社会〜
text:Sachica (Sachica Inna Jamaica)
r3.png 今年2月、ダンスホール界のトレンドであるダガリン(Daggering)・ソングに対し、ラジオ・テレビを含む公共放送での放送禁止令が発せられ、音楽業界を震撼させた。事の発端は皆さんもご存じのとおり、Vybz KartelとSpiceが歌う [Rampin' Shop] の大ヒットである。この曲は、ソング・オブ・ザ・イヤーに迫る勢いでヒットを続けていたところ、放送委員会(The Broadcasting Commission)の目に留まり、摘発を受けた。その様子をメディアが大きく取り上げ、新聞各紙も連日特集を組んだことで、巷では大きな話題となっている。
ダガリン・ソングを最初に発表したのは新人アーティストのBragga Datだと言われており、それにRDXやMr. Vegasが続き、今日に至る。そもそも、「ダガリン」とはどういう意味なのか。それは、公共の場でセックス行為の真似事をすることを指すダンスホール用語であり、またこれらは、ハードコア・セックス(hardcore sex)やドライ・セックス(dry sex)とも呼ばれる。そして、今回放送委員会が提示した放送禁止の基準は、「セックスや暴力が歌詞に明確に含まれる曲」となっており、たとえ放送禁止用語を「ピー」と隠したとしても電波に乗せることは許されない。

放送委員会の厳しい決定にはもちろん賛否両論だ。言論の自由を侵害しているというダンスホール擁護者の声が上がる一方で、禁止を擁護する学校関係者や教会関係者も少なくない。議論が白熱するなかで、首相は、Spiceをはじめとするエンタテイナーを首相官邸に招き、異例の討論会を開催したが、お上が最終的に下した結論は、「ダガリン放送禁止」であった。首相はさらに、「今後ダガリン・ソングを放送した放送局に対しては、罰としてライセンスを没収する」とまで公言した。エスカレートする騒動に、はじめは「ジャマイカなんだから、一沙汰過ぎれば元に戻るよ。そのうちまたどこでもダガリンを聞けるようになるから見てなさい」と事態を甘く見ていた一般のジャマイカ人も、政府や放送委員会の本気度には驚いた様子である。

一連の騒動のなかでもっとも影響を受けているのは間違いなく音楽関係者。なかでもラジオのDJにとって事態は深刻であり、「ラジオで流せる曲がない」「無難なR&B;くらいしか流せない」と不満を漏らしていたのを耳にした。ラジオをこよなく愛する著者としても、騒動以来突如ラジオがつまらなくなってしまったと感じることが残念でならない。

様々な知識人が一連の騒動に関して寄稿しているなかで、文化人類学者でもあるエドワード・シアガ元首相の記事が目に留まった。彼が、ダンスホール文化はカウンター・カルチャー(現存社会に抵抗する文化)の代物であり、ダンスホールは、現代社会を支配する家族のあり方や経済的な障害などという一般的な価値観に基づく市民生活を逸脱し、独自の価値観(権力、お金、セックス、暴力等)に基づく生き方を求める若者によって創作されるというあたり、「ダガリン」が社会問題として取り上げられるに至ったことは「必然」だったのかもしれない。一般のジャマイカ人は、「ダガリン」やダンスホールを社会から排除することを選ぶのだろうか、それとも文化として受け入れ普遍化することをえらぶのだろうか。
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■Sachica プロフィール

2007年3月からジャマイカに滞在。
レゲエはもちろん、社会問題や歴史にも興味深々。




2009.04.24:R.CUBE
関連リンク
 
【参考】
  • “Broadcasting Commission slaps daggering,” The Daily Observer, February 9, 2009.
  • “Reggae and dancehall A culture clash,” The Sunday Gleaner, February 22, 2009.
“The Ramping Shop debate rages on,” The Daily Observer, February 15, 2009.
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